2026.8.7

東京ガスが描く製造業向け知見継承SaaSのつくり方

東京ガスが展開する製造業向け新規事業「保全ノウハウ継承サービス」。共創パートナーとしてエムニが支援する、暗黙知の構造化と知見継承への取り組みを6つのテーマで紹介します。

東京ガス株式会社 ソリューション共創本部 ソリューション事業創造部 新事業開発グループ 吉田様、東京ガス株式会社 ソリューション共創本部 ソリューション事業創造部 新事業開発グループ 田村様、東京ガス株式会社 ソリューション共創本部 ソリューション事業創造部 新事業開発グループ 市川様、株式会社エムニ 代表取締役CEO 下野

技術者の長年の経験に裏打ちされた保全の知見や暗黙知は、その技術者が現場を離れると失われてしまう可能性があります。この課題に真正面から向き合っているのが、ガスや電気、ソリューションの提供を通じて社会に「安心・安全」を届けてきた東京ガス株式会社様です。同社は、製造業向けの新規事業「保全ノウハウ継承サービス」を展開しており、エムニは共創パートナーとして、その取り組みをご支援しています。本記事では、インタビューを通じ、6つのテーマでその取り組みをご紹介します。

1.「保全ノウハウ継承」という社会課題
 製造業のお客さまへのヒアリングから見えてきた、事業立ち上げの原点。

2.パートナー選定の背景
 なぜAIだったのか、なぜエムニだったのか。技術と泥臭く現場に行く姿勢を評価。

3.暗黙知を構造化する難しさ
 「ノウハウを残してくれ」では、現場は動かない。暗黙知を抽出するアプローチ。

4.開発・検証プロセスで得られたもの
 受注発注ではない、対等な議論から生まれたAI開発。

5.大企業 × スタートアップ、共創を続けるために
 範囲を持たせて議論する余地と、御用聞きにならない提案姿勢。

6.今後の展望とパートナーシップ
 「幅・深さ・高さ」で描く事業構想。日本のものづくりへの思い。

「保全ノウハウ継承」という社会課題

インタビュー中の様子

下野(インタビュアー):

本日はありがとうございます。東京ガス様は、設備保全のノウハウ継承に関する新規事業を立ち上げられ、エムニもご一緒させていただいております。はじめに、事業を立ち上げられた背景からお聞かせください。

吉田様:

まず前提として、日本全体が人手不足という大きな課題を抱えています。2030年には700万人の労働力が不足するという統計があり、製造業だけでも40万人以上が不足すると言われています。

我々はこれまで、ガスや電気といったエネルギー供給に加え、お客さまの多様な課題に寄り添うソリューションを提供することで、製造業のお客さまに「安心・安全」をお届けするとともに、よりよい事業環境づくりのお手伝いをしてきました。そのお客さまが今まさに直面されている「人手不足」という課題に対し、我々がこれまで培ってきた知見を活かして貢献できないかと考えたのが、今回の事業の出発点です。

インタビュー中の様子

下野(インタビュアー):

そこから、製造業向けの新規事業がどのように生まれていったのか、経緯を教えてください。

吉田様:

我々が新規事業や新ソリューションを構想する際は、常にお客さまを起点とすることを基本理念としています。実際には、数えきれないほどお客さまのもとへ足を運び、ヒアリングを重ねました。その結果、課題は大きく2つに集約されることがわかりました。1つは生産性や人手不足に関する部分、もう1つは国などから要請される脱炭素。いわゆるDXとGXの領域です。DXの早期実現を目指す上で、従来のIT化に加え、近年著しく進歩しているAIの活用が有効な解決策となり得るのではないか。この仮説から、我々の取り組みはスタートしました。

インタビュー中の様子

下野(インタビュアー):

新規事業の領域でご一緒させていただくのは、我々としても珍しいんですが、この事業が形になるまでには、失敗や挫折に近い経験もあったのでしょうか。

吉田様:

社内外の関係各所と連携し、乗り越えるべき点がいくつかあった、というのが率直なところです。お客さまへの直接のヒアリングは不可欠ですが、「ガス供給でご縁があるから」といって、すぐに訪問が叶うわけではありませんでした。既存の営業活動や商談中の案件との兼ね合いもあり、社内からは「今は難しい」「具体的な製品ができてからにしてはどうか」といった声も上がりました。この状況を乗り越えるため、お客さまとの最前線にいる営業担当と対話を重ね、事業の目的や「必ず解決すべき課題があるはずだ」という想いを共有しました。日々の営業活動がある中で、不確実な新規事業への協力を得ることは簡単ではありませんでしたが、最終的には私たちの熱意を理解し、共に最初の一社を見つけ出すために力を貸してくれました。

実際に一社でも、お一人にでもお話を伺う機会をいただけると、想定通りの課題はもちろん、我々が予期していなかった新たな課題についてもお話しいただくことができました。その結果を社内に持ち帰り、営業パーソンと共有・対話することで、「では、もう一度訪問しよう」という次のアクションに繋がっていきます。言葉にすると短いですが、このサイクルを一つ回すだけでも1、2ヶ月を要します。我々は、このプロセスを根気強く繰り返してきました。

パートナー選定の背景

下野(インタビュアー):

新事業をつくるにあたって、AIを含むデジタル技術の重要性は、どのように位置付けていらっしゃったのでしょうか。製造業は安全性や信頼性が求められる世界なので、不確実性のあるAIを選ぶかどうかは、大きな分かれ目だったと思います。AI自体は、あくまで手段・ツールの一つであると思うのですが、いかがでしょうか。

インタビュー中の様子

市川様:

製造業では「データ活用」とよく言われますが、そもそも我々がターゲットとするリアルな現場では、整然としたデータが残っていないケースが少なくありません。構造化されたデータが存在しない中で、いかにして知見やノウハウを継承していくか。構造化されていないデータを柔軟に処理できる点で、生成AIには大きな可能性を感じました。おっしゃる通り、AIはあくまでツールの一つですが、今回の課題解決において最適なツールだと判断しました。加えて、現場のベテラン層の方々にとって、自らマニュアルを作成したり、複雑なシステムを導入したりすることは、負担が大きいのが実情です。いかに手間を削減し、容易に必要な情報を蓄積できるかという観点から、AIの活用が最適解だと考えました。自然言語での対話を通じて情報抽出ができる点は、AIならではの利点であり、これがなければ実現は困難だったと考えています。

田村様:

今回のプロジェクトの目的は、製造業の人手不足という課題に対し、熟練者が持つ技術・技能・ノウハウをいかに有効活用するか、という点にあります。では、熟練者の方々の作業が、すべてルールベースで体系化されているかというと、決してそうではありません。ルールベースが成り立つ領域も当然ありますが、今回のケースのように、明確なルールだけでは捉えきれない曖昧な背景情報まで含めて扱うには、現行のAIがツールとして非常に親和性が高いと言えます。従来のルールベースの手法では限界があった領域の課題を解決できる可能性を秘めており、我々の目指す方向に合致した技術を的確に選定することが重要だと考えていました。

下野(インタビュアー):

ありがとうございます。では、数あるAI企業の中で、エムニとの取り組みに至った決め手は何だったのでしょうか。

インタビュー中の様子

市川様:

展示会でエムニさんのプレゼンを拝見したことがきっかけです。デモンストレーションされていた内容が、我々が構想していたイメージに非常に近かったのです。決め手となったのは、AI開発における高い技術力はもとより、製造業に特化し、その課題解決に真摯に取り組まれている姿勢です。それが我々にとって非常に重要なポイントでした。また、新規事業ゆえに、仮説検証を迅速に繰り返す必要があります。アジャイルにプロトタイプ開発と改善を繰り返すスピード感も考慮し、エムニ様こそが最適なパートナーであると確信しました。

田村様:

最初に下野様とお話しした際、技術力やスピード感もさることながら、「泥臭く現場に足を運びます」とおっしゃっていたことが印象に残っています。製造業の現場は、理論や机上の空論だけでは通用しない世界です。代表自らエンジニアと共に現場へ赴くというその姿勢は、「現場の負担を軽減するために、我々自身が汗をかく」という我々の信条と重なり、強く共感いたしました。

インタビュー中の様子

下野(インタビュアー):

確かに言ったかもしれません(笑)。実際、自分や弊社のメンバーは東海や静岡、九州と、現場へ足を運んでいて「やっぱり現場を見ないと」という意識が根付いているところがあります。そこは強みとして、より一層磨いていきたいと、あらためて思いました。

暗黙知を構造化する難しさ

下野(インタビュアー):

この取り組みはPoC的なところから始まりましたが、実際にプロジェクトを進めていくうえで、特に難しかった点はどこでしょうか。

市川様:

現在も試行錯誤の最中ですが、最大の課題は「現場の方々にいかにして受け入れていただけるサービスを構築するか」という点に尽きると考えています。現場で実際にチャットを活用いただくシーンを想定し、若手の方がどのように使うのか、ノウハウをどう蓄積していくのか。この点は常に課題であり、現場の業務フローを詳細に分析し、「このような形であればご活用いただけるのではないか」と仮説を立て、エムニ様にご相談しながら共に構築を進めています。このプロセスが、最も注力し、同時に苦心している部分です。

下野(インタビュアー):

暗黙知を言語化するにあたっては、具体的にどのようなアプローチを取られたのでしょうか。

インタビュー中の様子

市川様:

まず、暗黙知を有するベテランの方の負荷をいかに軽減し、いかに簡易化するかを検討しました。ベテランの中には、現場の業務で多忙な方や、日常的にPC作業をされない方も多くいらっしゃいます。そうした状況で、一方的に「ノウハウを文書化してください」と要請しても、多忙な中で報告書や引継書を作成するのは、現実的に困難です。そこで我々はまず、日常会話に近い「録音」からノウハウを抽出するというアプローチに着目しました。音声のみで報告を完了させ、ノウハウを抽出する。そのプロセスを仕組み化するにあたり、収集した音声をどう処理し、効率的に知見を引き出すかという点については、まさしくエムニ様の専門知識をお借りしながら、多角的な検証アプローチを試みていただきました。「この手法ならば実現可能性が高い」「この処理はサービスに実装するには負荷が大きい」といった技術的な判断も含め、暗黙知の言語化に関しては、非常に地道な検証を重ねてきました。

インタビュー中の様子

吉田様:

失敗談も共有させていただきますと、録音を活用する前の段階で、簡易なフォームで作業報告を残す方法を試したことがあります。いつ、誰が、どの設備で、何が起き、どのような考えで恒久対策を講じるか、といった項目です。この方法で運用可能か検証しましたが、結果として定着には至りませんでした。最初の5、6項目は回答していただけるのですが、7項目目あたりから入力が滞ってしまうのです。ヒアリングを通じて明らかになったのは、日々の多忙な業務の中で、入力作業が大きな負担となってしまうという現実でした。ノウハウ蓄積の重要性は皆様にご理解いただけていましたが、新たな作業が加わることで、継続的な運用を定着させることが難しい状況でした。最終的には入力が途絶え、データが全く集まらなくなってしまいます。仕組みを一方的に導入するだけでは、現場に本当の意味で受け入れられることはない、という結論に至りました。完璧を求めて頓挫するよりも、たとえ6〜7割の完成度であっても、継続可能な方法で着実に情報を蓄積していく方針へ転換しました。AIを活用すれば、たとえ不完全な情報であっても、大量に蓄積することで、そこから非常に多くの有益な知見を引き出せるはずだと考えたのです。このコンセプトに基づき、先ほど市川が申し上げた「音声」の活用に着目しました。

インタビュー中の様子

田村様:

我々がアプローチにおいて重視しているのは、いかにユーザーの負担を最小限に抑えるか、という点です。ユーザーが新たな業務負荷と感じがちな作業を、いかに負担感なく実行できるようにするか。その最適解はどこにあるのか。その解決策が、現時点では技術的に「音声」であるかもしれませんが、将来的には別の形になる可能性もあります。加えて、負担感の軽減だけでなく、相手のモチベーションやインセンティブにも踏み込んでいく必要があります。しかし、その最適解は、お客さまと地道なすり合わせを重ねることでしか見出すことはできないと考えています。

下野(インタビュアー):

私もまさに、その2点だと思っています。理想を言えば、今の業務をやるだけで自然に情報が溜まっていく、負荷を感じさせない状態が最終ゴールで、その理想にもっとも近い情報の拾い方が、音声だと考えています。そのうえで「喜び」、つまり「これを入れるとこんなメリットが得られる」という成功体験、よく言うクイックウィンにどう繋げるか。最初のハードルを下げながら成果を出して、サイクルがぐるぐる回っていく。そんなループを、お客さまも巻き込んで作っていけると素晴らしいと思っています。

開発・検証プロセスで得られたもの

インタビュー中の様子

下野(インタビュアー):

開発・検証のプロセスで、印象に残っているエピソードはありますでしょうか。

市川様:

お客さまとのエピソードで申しますと、先ほどのノウハウ抽出の仕組みを具現化し、現場に導入してご登録いただいた時のことです。当初、お客さまは「どのようなものだろうか」と半信半疑なご様子でした。しかし、実際に音声入力から生成された情報をご覧いただくと、「この程度の入力で、これほど詳細な内容が記録できるのか」と驚かれていました。かけた手間に対し、どれだけの価値が返ってくるか。その費用対効果が可視化されることで、「これなら自分でもやってみよう」という前向きな気持ちを引き出すことができたのです。誰しも、意義を感じられない作業には、積極的に取り組みたいとは思わないものです。そのため、「これには意義がありそうだ」と感じていただけたことは、ノウハウ継承の重要性を現場に浸透させる上で、非常に大きな一歩であったと認識しています。

下野(インタビュアー):

結果として、進め方の面ではどんな手応えがありましたか。

市川様:

機能実装に関しても、相互に議論しながら進められている点が最も良い成果だと感じています。大規模なシステム開発などでは、あらかじめ厳密な仕様を固め、その充足度を確認しながら進める開発スタイルが採られることも少なくありません。しかし、新規事業の立ち上げフェーズにおいて、その手法は必ずしも最適ではありません。むしろ、エムニ様の開発者の皆様が主体的に「この部分を改善してはどうか」「この仕様は本当に最適か」といったご意見をくださることが、プロジェクト推進において大変有益に作用しています。

田村様:

将来的な拡張性を見据え、「このような機能や仕組みをあらかじめ実装しておきました」と、先を見越したご提案・実装をいただいています。そして、それが結果として良い相乗効果を生んでいます。エンジニアの皆様のモチベーションを維持することはプロジェクトの成功に不可欠であり、そうした主体的なご提案を積極的に採り入れ、活かすことで、システム開発や検証が加速しています。これは非常に好ましい状況であり、今後もこの関係性を継続していきたいと考えています。

インタビュー中の様子

下野(インタビュアー):

ありがとうございます。我々としても、御社との取り組みはすごくやりやすく、ありがたいと感じています。スタートアップだからと捉えられることもなく、製造業に対してどういうバリューを出せるのか、どう開発を進められるのかを、対等にお話しさせていただいている。受注発注の関係ではない、というところが本当にありがたいです。

市川様:

我々はエムニ様を、まさに事業を共に創造するパートナーと認識しております。今後ともぜひ、よろしくお願いいたします。

大企業 × スタートアップ、共創を続けるために

下野(インタビュアー):

大企業でスタートアップとの共創に取り組まれている方も多いと思います。スタートアップとの取り組みを進めるうえで、意識されていることはありますか。

インタビュー中の様子

田村様:

例えばシステムインテグレーターとの一般的な協業では、発注側が要件を明確に定義し、「この仕様で」と依頼することで、厳密なスケジュール管理のもとプロジェクトが進行します。それは双方にとって管理しやすく、見通しの立てやすい進め方ですが、今回エムニ様をパートナーに選んだのは、スタートアップならではの専門的な知見や開発スピードに期待したからに他なりません。もちろん、最終的な意思決定は我々の責任において行いますが、エムニ様には一定の裁量をお任せし、「どうすればより迅速に、より良いサービスを構築できるか」を対等な立場で議論し、状況に応じて柔軟に計画を調整しながらプロジェクトを推進しています。

下野(インタビュアー):

どちらがいい悪いではないと思うんですが、要件をやりながら決めていくような話や、トライアンドエラーを重ねること自体に価値・意味がある取り組みでは、スタートアップとしての強みが生きてくると思っています。そのうえで私が意識しているのは、おこがましいですが、臆せず、御用聞きにならないことです。御用聞きでいいなら、我々でなくてもいい。製造業への高い解像度を持っているからこそ、ノウハウの話で田村さんのお考えに「私はちょっと違うんじゃないか」と感じたことがありました。その時は、自分の考えを手書きの図に起こして持参して、「こういう風にやった方がいいんじゃないですか」とディスカッションさせていただいた事があります。立場に関係なく、サービスとして良いと思うものを素直に提案する、主張する。そこは意識しているところです。

今後の展望とパートナーシップ

下野(インタビュアー):

「保全ノウハウ継承サービス」は、今後どのように広げていく構想でしょうか。

インタビュー中の様子

吉田様:

我々が最終的に目指しているのは、「ものづくり・製造業における属人化の課題を解決し、知が循環する製造業を実現する」というビジョンです。その第一歩として現在は設備保全に取り組んでいますが、今後の展開については「幅」「深さ」「高さ」という3つの軸で構想しています。

第一に「幅」の拡大です。工場内には生産オペレーションや生産技術など多様な業務が存在し、それぞれに属人化という共通の課題があります。今後は対象領域を広げ、工場全体の属人化課題を一気通貫で解決していくことを目指します。

第二に「深さ」の追求です。現在は音声や言語といった非構造化データを主に扱っていますが、今後はこれを深化させ、計測データや稼働データといった構造化データと組み合わせることで、新たな示唆の発見や、より高度な予兆保全の実現も可能になると考えています。

第三に「高さ」の視点です。一つの企業内にも複数の工場が存在し、さらに視座を上げれば、業界全体が同様の課題を抱えています。ビジネスにおける「競争」領域とは別に、業界全体で協力すべき「共創」領域が存在すると考えており、その領域においては、ナレッジシェアや業界横断のナレッジプラットフォームの構築といった展開も視野に入れています。これにより、日本全体の製造業の競争力を底上げすることに貢献できるのではないか。我々はそのような大きな目標まで見据えています。

下野(インタビュアー):

最後に、日本の製造業・ものづくりをさらに元気にしていくために、東京ガス様として描かれているビジョンを、このプロダクトへの思いも含めてお聞かせください。

インタビュー中の様子

吉田様:

東京ガスは、エネルギー供給を基盤に、ものづくりや社会の安心・安全を支えてきた会社です。属人化の解消はもちろんのこと、お客さまが本来有している現場の知見という「資本」を、永続的に守るためのお手伝いをしていきたいと考えています。それと同時に、私が強く抱いているのは、「現場で働く方々の負担を少しでも軽減したい」という純粋な思いです。私自身、東京ガスに入社した時、ガス空調という分野の技術開発部門に配属されました。その分野の存在すら、当時は全く知りませんでした。性能試験では、付帯設備のメンテナンスも自分たちで行う必要があります。優秀な先輩がいて、目まぐるしいスピードで説明をしてくれるのですが、専門用語が多く、メモを取ることすら追いつきません。後日、改めて同じ質問をしようとしても、多忙な先輩の時間をこれ以上いただくのは申し訳ないという気持ちが働き、次第に質問をためらうようになってしまいました。一方で、先輩には先輩で、「一度教えたのだから、あとは自分で考えて成長してほしい」という親心があったのかもしれません。お互いに悪気はないものの、こうした小さなすれ違いが、結果として若手の成長機会を妨げてしまうこともあるのではないかと、当時の経験を通じて感じました。

これらは、まさに人が介在するからこそ生じてしまう、無用な摩擦やフラストレーションと言えるでしょう。6、7割の領域は、人ではなくAIや機械を活用し、本当に重要なコアの部分を人が担う。人とAIにはそれぞれ得意不得意がありますから、その役割分担を明確にしていきたい。結果として、極めて個人的な動機を申し上げれば、過去の自分のような経験をする人をなくしたい、という思いがあります。あの時の私と同じような、悔しい思いをする人を一人でも減らしたいのです。現場の負担や負荷を低減できれば、それは個人の成長に繋がり、個人の成長は組織の成長、ひいては企業の持続的な発展に繋がっていきます。その連鎖が、日本のものづくり・製造業を活性化させ、日本全体を元気にすると信じています。それを実現することが我々のミッションであり、エムニ様をはじめ、多くのパートナーの皆様と共に成し遂げていきたいと強く願っています。

下野(インタビュアー):

めちゃめちゃ同じ思いだなと思いながら、伺っていました。エムニは最近、ミッション・ビジョン・バリューを改訂して、ビジョンに「製造業におけるAI活用のハブになる」を掲げています。AI活用がサイロ的に行われることで、再開発が起きたり、同じ失敗が繰り返されたり、無駄が生まれてしまっている。我々がそのハブになって、知見やノウハウを貯めて、別のお客さまとの取り組みに生かしていくことで、成功確率を高めたり、本当は半年かかるものを3ヶ月でできるようにしたりする。テクノロジーの力で製造業をエンハンスして、「日本を盛り上げる」ことにコミットしていきたい。まさに御社と、ビジョン・ミッションは同じ方向だと感じました。

インタビュー中の様子

田村様:

エムニ様に我々が期待しているのは、まさにお話にあった「ハブ」としての役割です。AI技術や開発スピードはもちろんのこと、「日本のものづくりを良くしたい」という共通の目標に向けたハブとして機能していただき、ぜひ積極的なご提案をいただきたいと願っています。我々もワンチームの一員として、提供できる技術や知見は惜しみなく共有していきます。日本を盛り上げていくために、一緒に、さらに取り組んでいきたいと思っていますので、よろしくお願いします。

下野(インタビュアー):

本日は貴重なお話を、本当にありがとうございました。

まずは、お気軽に

お問い合わせください。

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