2026.2.19

生成AIワークショップとRAG実装への軌跡

エムニのワークショップを起点に、STAiBLEへRAGを実装。現場課題を業務知識として定着・活用するまでの実践プロセスを紹介。

エステー株式会社 経営統括本部 データ戦略部 DX・インフラチーム 玉川様、エステー株式会社 経営統括本部 データ戦略部 システム開発チーム 河上様、株式会社エムニ 代表取締役CEO 下野、株式会社エムニ AIエンジニア 奥野

生成AIワークショップ支援を導入した背景

インタビュー中の様子

インタビュアー:

はじめに、エステー様がエムニの生成AIワークショップをご活用いただいた背景について伺いたいと思います。今回、生成AI活用に向けて社内理解やスキルの底上げを進められた背景と、エムニの対応についてお聞かせください。

河上様:

弊社では中期経営計画の中で「持続的な成長を支えるための基盤強化」を推進しています。DX戦略の柱として「経営基盤DX」「マーケティングDX」「人材DX」の3つを掲げており、この中の「人材DX」の一環として生成AIの活用推進を行ってきました。生成AIの導入自体が目的ではなく、経営課題を解決するためのツールとして、全社員が当たり前のように生成AIを使いこなし業務を高度化できる状態を目指し、その第一歩として社内理解の促進やスキル醸成に着手しました。

下野:

そうですね。当時は2024年5月頃で「どう生成AIを使うか」に皆さん関心を持ち、少しずつ触り始めている時期でした。環境整備は進んでいたものの、「どう活用を定着させるか」「使える環境があっても使われない」といった課題感がありました。そうした状況を踏まえ議論を重ねる中で、生成AIワークショップが一つの有効な解決策になるのでは、という流れでお話が進んだと記憶しています。

インタビュアー:

エステー様は生成AIに関して勉強会なども含めさまざまな取り組みをされてきたと思います。従来の勉強会やツール導入において、理解のばらつきや活用イメージ不足、現場定着の難しさなど、どのような課題を感じていらっしゃいましたか?

インタビュー中の様子

河上様:

一般的なツール導入と異なり、生成AIは活用範囲が広い分、「どう使うのが正解か」が決まっていない点が課題でした。実際に少し使ってみても、すぐに使われなくなったり、「効果が分からないからやめてしまう」といったケースが一定数出てしまうことを課題だと感じていました。

下野:

まさにおっしゃる通りで、「何でもできる」ことが一番難しいと思います。「何をやってもいい」「テーマは自由」と言われると、逆に具体化しづらく、触り始めるところにハードルが生まれてしまいます。これは御社に限らず、他社でもよくある課題です。だからこそテーマ設計が重要で、御社と連携しながらアイデアを詰めていきました。

ワークショップからSTAiBLEへのRAG機能追加に至った経緯

インタビュアー:

生成AIワークショップを通じて、STAiBLEへのRAG機能追加プロジェクトにつながったと思いますが、どのような気づきや課題感が生まれましたか?

インタビュー中の様子

玉川様:

生成AIワークショップの中の共創ワークショップで、各部署ごとに抱えている課題や困っている点を洗い出したり、「AIをこう活用できるのでは」といったアイデア出しを行いました。さまざまなテーマが挙げられたのですが、共通していたのが「社内情報を探すのに時間がかかる」という点でした。もともと課題と感じていた部分でしたが、実際に業務を行っている社員にとっても同じように強い課題となっていることを改めて確認できました。

下野:

共創ワークショップではホワイトボードを使いながらインタラクティブに進めたのですが、単方向ではなく、深掘りしながらマルチターンで対話することで、「どこに課題があるのか」「AIで何ができると嬉しいのか」をより具体的に把握できたと思います。弊社としてもいろいろな企業様とワークショップをしていますが、御社は意見も多く、盛り上がりましたし、こちらも理解が深まりました。

玉川様:

そうですね、共創ワークショップで出たアイデアをもとにエムニさんと議論を重ねる中、AI活用推進の観点から「AIで解決しやすいもの」「まず取り組みやすく、インパクトが大きいもの」を選びました。その結果、社内情報を簡単に見つけたいというニーズが多かったので、そこを解決する手段としてRAGが適しているという判断になり、RAG機能の追加につながりました。

下野:

テーマ選定は迷うところでもありますが、ワークショップで生の声、リアルなニーズを聞けていたので、絞り込む際も「このテーマにすると何が嬉しいか」を明確にイメージしながら進められたと思います。開発側としても意義や価値を理解した状態で進められたのは大きかったです。

STAiBLEへのRAG機能追加プロジェクトのポイント

インタビュー中の様子

インタビュアー:

RAG機能追加プロジェクトが立ち上がった際、エムニにご依頼いただくにあたり、回答精度、情報の信頼性、運用のしやすさなど、重視したポイントを教えてください。

玉川様:

今回のRAG機能追加は、これまでのSTAiBLEが「社内向けのクローズドな生成AIツール」という位置づけで、社内情報を学習していない状態から、一歩進化させる最初の取り組みでした。だからこそ、回答精度とユーザーの使いやすさを重視しました。
ユーザーが実際に使ってみて精度が良くないと「結局使えない」と感じて離れてしまいます。そうなると、生成AI活用の推進自体が止まってしまう恐れがありますので、まずは「使える」と思ってもらうことが重要でした。
また、この最初のRAGをきっかけに「他の業務でも使えるのでは」というアイデアが広がっていくことも期待していました。

下野:

プロジェクト期間は比較的短かったので、あらゆる手を試せるほどの余裕があったわけではありません。ただ、回答精度が重要なのは当然で、その精度をどう上げにいくか、失敗をどう避けるかがポイントでした。
開発はアジャイルで進めましたが、他案件でアジャイルでRAGを組んできた経験があったので、そのノウハウを活かしながら「精度が出やすい作り方」「踏んではいけない地雷」を避けつつ、目標とする精度感は達成できたと考えております。

インタビュー中の様子

玉川様:

加えて、導線やUIも重要でしたね。RAGになった途端、画面が切り替わってUIが変わり、使いづらくなるのは避けたかったので、元々のSTAiBLEのUIのままRAGが使える画面構成にしてほしい、という要望もお伝えしました。要望に沿って細かく修正しながら作っていただけたのは非常に助かりました。

インタビュアー:

社内資料など多様な情報がある中で、連携や統合の難しさもあったと思います。UI統合もその一つだと思いますが、他にも難しかった点はありましたか?

玉川様:

社内情報といっても量が膨大なので、まず「どのテーマでRAGを作るか」の見極めが難しかったです。ワークショップでも、IT問い合わせ情報、商品情報、とさまざまな意見が出ました。その中で「取り組みやすさ(情報がどれだけ揃っているか)」と「インパクト」を一緒に見ながらテーマを選びましたが、優先度付けは自分たちだけだと難しかったと思います。

システム開発・検証の過程と成果

インタビュー中の様子

インタビュアー:

実際にシステムを構築する上で、どんなところが難しかったでしょうか。

下野:

スピーディに進める、という点はもちろんあります。それに加えて、今回はゼロから作るのではなく、既存のSTAiBLEというシステムにRAG機能を追加する開発でしたので、どう滑らかにつなぐかが難しかったです。
特に導線の文言や表現をどうするかは、かなり熱く議論した記憶があります。そこは難しさでもありましたが、こだわって作り込んだポイントでもあります。出戻りが起きないよう、自然に「追加機能」として受け入れられる形をどう作るかが、工夫した点でした。

玉川様:

運用面も重要でしたね。今回はマニュアルやFAQのRAGにしたので、マニュアルは更新が発生します。情報更新のしやすさ、つまり自分たちで簡単に運用できることを要望としてお伝えしました。そこも踏まえて構築していただけたのは、本当に助かりました。

インタビュアー:

導入前後で見えた回答精度や利便性の変化について、具体的にどんな変化がありましたか?

玉川様:

RAG機能として「IT問い合わせ」と「申請書検索」の2つを追加しました。IT問い合わせについては、これまでもマニュアルを作っていましたが、ユーザー自身が「何が起きているか」が分からず、マニュアルにたどり着けないことがあり、情シス部門への問い合わせが多く、対応負荷が高い状態でした。
RAG導入後は、キーワードや起きている現象を入力すれば、AIが回答を作ったり、該当マニュアルを提示してくれますのでユーザーが自分で解決できるケースが増え、データ戦略部の対応負荷は減ったと思います。

インタビュー中の様子

玉川様:

申請書検索では、最初の検証後に、ユーザーからニーズの多かった「生成AIの回答の中に必ず管理部署を明記すること」を要望として追加させていただきました。途中での追加要望となりましたが、問題なく実装していただき、精度面でも対応してもらえました。UIも含めてトライアンドエラーを繰り返しながら、スピーディに対応いただけたことはプロジェクトを進める上で重要だったと思います。

下野:

走りながら作っていく部分も多くありました。作ってみないと、生きたフィードバックは出てこないと考えていたので、まずベースを素早く作ること、そしてフィードバックを受けて改善をスピーディに回すことが重要でした。そのための体制づくりや、既存システムのキャッチアップを素早く進めることは難しかったですが、エンジニアメンバーが頑張ってくれました。

今後の展望と課題について

インタビュアー:

今後の展望や課題についてお伺いしたいと思います。ワークショップの継続的な実施や、RAGの対象データ拡張など、今後予定されている取り組みがあればぜひお聞かせください。

河上様:

ハンズオンやワークショップについては、初心者向けの内容を引き続き実施して、全社的なリテラシーの底上げを進めたいと考えています。その上で、今後は部署ごとのハンズオンやワークショップも実施したいです。部署固有の業務課題は多いので、実業務に即した形で展開することで、受講者が翌日から自分の業務の中でAIを使える状態にしていきたいと思っています。
RAGについても、対象データを順次広げていきたいです。各部署が管理しているマニュアルもまだありますし、社内でナレッジを蓄積していくナレッジベースのようなものもあります。そうしたものをRAG化し、必要な情報をより手軽に得られる環境を整えていきたいです。

インタビュー中の様子

インタビュアー:

社内チャットボット活用をさらに広げていく上で、今後の課題があれば少し深掘りして伺いたいです。

河上様:

ハンズオンやワークショップを通じて「AIを使ってみよう」という社員はかなり増えました。ログを見ても利用者数は増えていますが、まだ実業務の中で使いこなすところまで到達できていない方も多い印象です。今後は、単なる操作習得にとどまらず、部署単位や役職単位でのユースケースや活用事例を提示していくことが大切だと考えています。

下野:

個別部署ごとに深めていく進め方は王道だと思います。その上で、チャットボットはできることが広い分、どこに特化するかが重要になります。エージェント化してワークフローを組むなど手段はいろいろありますが、ワークショップを通じて事例やニーズが見えた際に「これはキラーユースケースだ」と言えるものが見つかり、インパクトが期待できるのであれば、そこに絞って作り込むという選択肢もあると思います。

エムニとの協働を振り返って

インタビュー中の様子

インタビュアー:

ここまでの協働を振り返って、エムニの提案力や実装力、スピード感などはいかがでしたでしょうか?

河上様:

ワークショップやハンズオンでは、弊社寄りの内容を一緒に考えてくださったり、弊社の業界に近い活用事例を共有いただいたりして、内容設計の面でも柔軟に対応していただけました。全体としてスピーディに対応いただき、とても助かりました。

インタビュアー:

最後に、今後エムニに期待することや、同様の課題を持つ企業に向けたメッセージがあればお願いします。

河上様:

これまでも頼りにさせていただいているのですが、今後も変わらず、生成AIに関することを何でも相談できる存在として、引き続き伴走いただけたらありがたいと思います。

まずは、お気軽に

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