2026.1.7

オープンソースMMMで実現する広告分析内製化

Google が提供するオープンソースモデル(マーケティング・ミックス・モデリング)「Meridian」を活用した、広告投資最適化プロジェクトのご紹介

エステー株式会社 マーケティングコミュニケーション本部 藤原様、株式会社エムニ 代表取締役CEO 下野、株式会社エムニ AIエンジニア 奥野

オープンソースMMMの活用を推進した背景について

インタビュー中の様子

インタビュアー:

はじめに、エステー様がオープンソースのMMM活用を進める背景からお伺いしたいと思いますが、広告効果測定を強化しようとされた理由は、どこにあったのでしょうか?

藤原様:

弊社では、3か年のDX戦略を推進しています。DX戦略は大きく3つのテーマがあり、私はその中でマーケティングDXのプロジェクトマネジメントを担当しています。マーケティングDX領域では、ROAS(広告費用対効果)の最適化、特にテレビCMやデジタル施策の効果検証に取り組んでいましたが、運用していく中で、より「現場で使える」形にしたい思いが強くなってきました。 既存の分析方法や仕組みを維持することを前提としつつも、もともと利用していたパッケージ型の仕組みでは、分析の粒度や精度という点で大変役に立つ一方で、カスタマイズした分析や、より柔軟な分析、あるいは「これまでとは異なるカテゴリー」を見たいといったニーズに対しては、痒いところに手が届かない側面がありました。 その点、オープンソースなら、必要に応じて実装しながら進められる。そこが、今回GoogleのオープンソースMMM「Meridian」に着目した背景です。

インタビュアー:

従来の分析方法や既存ツールだと、費用負担・外部依存・PDCAスピードなどが課題になるケースがあると思いますが、藤原様の立場から見て、どのあたりがネックだったのでしょうか?

インタビュー中の様子

藤原様:

課題は大きく2つです。1つ目は、既存のMMMサービス全般に言えることですが、パッケージ化されているがゆえにデータ入力形式の自由度が低く、分析数が増えるほど従量課金になりやすいなど、柔軟性に欠ける点です。2つ目は、MMMの知見を持つ企業が日本では限られており、ナレッジそのものが価値となるため投資対効果を慎重に見極める必要がある領域だという点です。 この課題に対応するため、柔軟性とスピード感を持って、スクラッチで検証を進められるパートナーが必要でした。既存の本流となる仕組みを前提としつつ、そこではカバーしきれない要素をアジャイルに補完し、継続的にトライアンドエラーを回せるパートナーを求めていました。

下野:

そうですね、もともとエステー様とは、いろいろなお取り組みをさせていただいているのですが、エムニの強みは、要件に応じてしっかりカスタマイズしながら伴走支援できる点にあると考えています。プロジェクトは、最初からゴールが完全に見えているケースのほうが少ないので、進めながらフィードバックをいただき、密に連携しつつ作り込んでいく。その進め方でしっかりとご支援できます、というお話をさせていただきました。

藤原様:

過去にエムニさんに生成AIのツールやシステムを作っていただいたこともありましたし、ワークショップのデザインをお願いしたこともありました。その経験から、状況に応じて臨機応変に対応してもらえる、という信頼感がありました。今回もその期待値を持ってお願いしましたが、現時点でもかなり頑張っていただいていて、満足しながら進められています。

Googleのオープンソースに着目した理由

インタビュアー:

次に、Googleのオープンソースに着目した理由を伺います。分析精度を担保しつつ、リアルタイムかつ柔軟な分析を行うという観点で、どのような点に期待されていましたか。

インタビュー中の様子

藤原様:

オープンソースMMM自体は以前から存在していて、Meta社のものもありますし、GoogleもMeridian以前にLightweight MMMを公開していました。ただ、今回公開されたMeridianは、使いやすさ、より詳細に分析できる点、そして何よりドキュメントがしっかり揃っている点が大きかったです。これまでのオープンソースより一段"触りやすい"感覚があって、「いい機会だから試してみよう」と思いました。

インタビュアー:

内製化によって実現したかった理想像はどんなものですか?

藤原様:

理想はシンプルで、既存の分析方法・仕組みは維持しつつも、分析したいカテゴリや商品・ブランドについて、現場担当者が比較的簡単に、必要なタイミングで分析できる状態を作ることです。従来は、決められた形で毎月データフォーマットを入力し、データを収集して、月1回分析を回す運用でした。Meridianでも一定の手順は必要ですが、それでも「こういう見方をしたい」「インプットはこうしたい」に柔軟に寄せられる状態にしたい。新しいカテゴリ・ブランドを見たくなったときも、多少の実装は必要でも、実装して→分析して→改善するを高速に回す。つまり、分析の民主化と高速化が目標です。

インタビュー中の様子

下野:

従来の運用では、基本的に月次レポートとして分析結果が提出される形が多いと思います。ただ、実際にはマーケティングに関わる方は複数いらっしゃいますし、それぞれ立場や関心も異なりますよね。たとえば、突発的に新しいCMを投入した場合など、『このタイミングでもう一度分析したい』『今月は2回レポートが欲しい』といった、現場起点の要望やニーズはありましたか?ここはAI導入の文脈でも重要で、モデルの性能より先に「運用の速度」が競争力になります。特にオープンソースは"無料"が魅力ではなく、現場の意思決定サイクルに合わせて変化できるのが本質です。Meridianはドキュメントが揃っていて学習コストが下がるので、内製化の入口として相性がいい、と判断しやすかったんだと思います。

インタビュアー:

現場のニーズって、月次レポートでは追いつかないことが多いですよね。

藤原様:

ありがとうございます。とても鋭いご質問だと思いますし、まさに現場のニーズはそこにあります。たとえば新製品を投入した場合、分析を行いたいタイミングは一度きりではなく、複数回発生します。しかし、従来の仕組みでは、そうしたタイミングごとの変化を十分に捉えきれないという課題がありました。その意味でも、今おっしゃっていただいたようなニーズは、現場として確かに存在していると感じています。

下野:

理想の姿があった上で、その実現に向けてエムニが今のような形で提案してきた、という流れだったと思います。私たちの関わり方にはさまざまなパターンがありますが、よくお話ししているのは、単なる受発注の関係ではなく、伴走するパートナーとしてご一緒するという形です。実装までしっかり踏み込み、形にするところまで支援する。その一つの手段として、ワークショップの設計なども行っていますし、やり方や背景を隠すことなく同じ目線でご一緒できたことが、今回の取り組みを前に進められた理由であり、エムニだからこそ提供できた価値だったと考えています。

生成AIプロジェクトの立ち上げ

インタビュー中の様子

インタビュアー:

今回、エムニへご依頼いただくにあたり、分析精度・再現性・スピードなど重視点があったと思います。一番重視されたのは何でしたか?

藤原様:

単発というより伴走してもらう形なので、重視したのはやはり柔軟性です。分析を回すと必ず課題が出てきて、依頼時点で定義した要件は日々変わっていく。そこに対応できるかは重要でした。無理を押し付けるという意味ではなく、出てきた課題をアジャイルに解決していける体制や、中の人の解像度と対応力を頼もしいと感じました。

インタビュアー:

TVCMの視聴率、SNS広告のインプレッション、売上、単価、広告費…さまざまな指標が絡む中で、データ整備や費用対効果(ROI)を整理する難しさはどこにありましたか?

藤原様:

やはりデータ収集の難易度が高いです。テレビCMに関するデータやマーケ施策のデータは、外部データにあたります。例えばPRPのように自社で計測しているわけではなく、データ会社から提供を受けるものもあれば、そもそも自分たちで取っていないものもある。ここはMMM領域につきまとう問題だと思っています。

インタビュアー:

開発側としても、そこが一番しんどいところですよね。 プロジェクトを進めていく中で、例えばデータの前処理が難しかったとか、分析結果がなかなか上手く出なかったとか、どういったところが一番課題点というか、ハードルとしてありましたか?

インタビュー中の様子

奥野:

そうですね。Meridianのモデルが想定しているインプット形式と、実際の生データをすり合わせる作業には苦労しました。変数の数が多すぎるケースや、特定の期間にしか数値が存在しないデータもあり、そうした細かな条件差を一つひとつ調整していく必要がありました。

インタビュアー:

現時点で、エステー様として十分に納得できるデータ、そしてアウトプットは得られていると言えそうでしょうか?

藤原様:

そうですね、現状は"できつつある"という段階です。まだプロジェクト期間中ではありますが、壁にぶつかるたびにご提案をいただきながら、一緒に取捨選択を重ねて進めています。この進め方でなければ、ここまで来られなかったのではないかと感じています。現時点でも非常に満足していますし、常にベストなやり方を選んでいただいていると感じています。

開発・検証の過程と成果

インタビュー中の様子

インタビュアー:

Meridianを活用したモデリング検証は、どのように進めたのでしょうか。既存の有償ツールとの比較で見えた特徴や精度感も、話せる範囲でお願いします。

藤原様:

検証サイクルとしてはシンプルで、まず変数を入れて1度回す。出てきたアウトプットを、既存サービスの分析結果と比較して差がどれだけあるかを見る。これが定量的な比較です。 加えて、定性的な評価もしています。アウトプットを現場担当者や私が見て「さすがにおかしい」と感じるなら、インプットが妥当か/モデルが妥当かを見直す。その解釈と修正の往復も行っています。

インタビュアー:

開発プロセスで直面した課題と、乗り越えた工夫も教えてください。

インタビュー中の様子

藤原様:

壁にぶつかるたびに提案をいただいて、一緒に取捨選択しながら進めています。プロジェクト期間中なので「完成」とは言い切れませんが、常にベストなやり方を選んでもらっている感覚です。 Meridianは説明変数として20個ぐらいしかデータを持てないんですが、実データには変数がたくさんあります。評価したい要素も多い。そこで、独自のデータ整形アルゴリズムを作ってもらい、必要に応じてモデルをチューニングしました。 "OSSをそのまま使う"のではなく、現場の意思決定に耐える形に寄せる。そのための実装をコミュニケーションしながら進められたのが大きく、私一人ではできなかったかもしれないところなので、すごくありがたいなと思っています。

インタビュアー:

すでにお話しいただいた内容と重なる部分もあるかと思いますが、こういう提案が助かったなとか、こういう場面がポジティブに映ったな、とか一つ印象に残ったお話をお聞かせいただけると嬉しいです。

藤原様:

私はIT会社にいたこともありますし、他のIT企業と仕事することも多いのですが、一般的なベンダーは既存パッケージに当てはめようとしがちです。業務標準化ならそれでもいい。でも今回のように新しい技術を使うときは、臨機応変にやり方を一緒に考える必要がある。 その点、エムニさんは"伴走"がぴったりです。こちらが「こういう方法で分析できないか」と提案しても、フラットに議論して、良い案を一緒に選ぶ。やってみて、改善して、またやる—このサイクルを回せるのがありがたいですし、こういう経験は他の会社さんとではあまり出来ないというイメージがあって、すごくありがたいです。

今後の展望と課題

インタビュー中の様子

インタビュアー:

今後の展望について伺います。分析モデルのアップデートや他部門展開など、どんなロードマップを描いていますか?

藤原様:

現状はまだMVP、つまり必要最低限の分析機能と、最低限のビジュアル化されたアウトプットに留まっています。ここからは3つクリアしたいです。 1つ目は、他カテゴリーで使えるかを都度検証すること。 2つ目は、ビジュアルの改善。現場部門に使っていただきながら、もっと見やすい方法がないか随時アップデートしたい。 3つ目は、究極的には自走です。オープンソースなので扱いやすい面はありますが、社内にデータサイエンス人材が十分にいるわけではない。だから社内育成やリテラシー向上は継続的に必要だと感じています。

インタビュアー:

今後、エムニに期待することがありましたらお聞かせいただきたいです。

インタビュー中の様子

藤原様:

そうですね。これまでも期待してきた点ですが、こちらが『少し困ったな』と感じたときに、すぐ相談できて、クイックに動いていただけるところです。これまでもそうした対応をしていただいていますし、今後も引き続き期待しています。

下野:

ありがとうございます。エムニではこれまでさまざまなプロジェクトに取り組んできており、その中で知見も着実に蓄積されてきています。ただ、それをそのまま押し付けるのではなく、やはり大切なのは、きちんと課題を捉えた上で解いていくことだと考えています。そのために、私たちは技術や手法といった"武器"の引き出しを増やし続けてきました。御社の課題感や実現したいことをベースに、それらを組み合わせながら価値提供や課題解決に今後もご一緒できれば嬉しいです。そうした形で、AIテクノロジーの力を最大限、御社の業務に役立てていければと思っています。引き続き、ご一緒できると幸いです。

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